5.基本的人権の原理 5−1 人権宣言の歴史       (1)国民権から人権へ   (2)自由権から社会権へ   (3)法律による保障から憲法による保障へ   (4)国内的保障から国際的保障へ 5−2 人権の観念       (1)人権の固有性…人権が憲法や天皇から恩恵として与えられたものではなく、人間であることにより当然に有するとされ         る権利であること   (2)人権の不可侵性…人権が原則として公権力によって侵されないということ   (3)人権の普遍性…人権は、人間であるということだけで当然、すべて享有できる権利であるということ 5−3 人権の内容     1.人権の分類   (1)自由権(国家からの自由)…国家が個人の領域に介入することを排除し、個人の自由な意思決定・活動を保障する人権   (2)参政権(国家への自由)…政治に参加する権利。自由権の確保に仕える。   (3)社会権(国家による自由)…社会的・経済的弱者が人間に値する生活を営むことができるように、国家の積極的な措置 を求めることができる権利   (4)受益権(国務請求権)…国家に対して一定の作為を要求する権利。 国家賠償請求権・裁判を受ける権利・請願権 2.人権の法規範性と裁判規範性   背景的権利→法的権利−裁判的救済あり→具体的権利  −裁判的救済なし→抽象的権利   プログラム規定…個人に対し裁判による救済を受けうるような具体的な権利を付与するものではなく、国家に対してそ        の実現に努めるべき政治的道徳的目標と指針を示すにとどまる種類の規定のこと。   人権としての意味すら有していない規定。     法規範性 裁判規範性   救済方法   具体的権利 あり   あり   裁判所による救済可能   抽象的権利 あり   原則なし(立法が存在すればあり) 法律なければ政治部門、あれば裁判所による救済可能   プログラム規定   なし   なし      もっぱら政治部門 3.制度的保障  …個人的権利とは異なる一定の制度に対して、立法によってもその核心ないし本質的内容を侵害できないという特別な保   護を与え、当該制度それ自体を客観的に保障していくもの。 大学の自治・私有財産制・地方自治制・政教分離(*) 5− cf. 人権問題の処理手続       ?誰の人権が問題になっているか  人権享有主体性の問題   ?どのような内容の人権が問題なのか 憲法上保障されているか  何条で保障されているか  人権の性質は   ?誰が制限しているのか  公権力による制限か(国家・条約・条令)  私人による制限か   ?その制約は許されるか  公権力による制限 公共の福祉→違憲審査基準の定立→あてはめ    私人による制限  私人間効力の間接適用説に従って利益衡量   ?憲法訴訟上の問題点はないか  違憲審査の対象となるか  訴訟要件 本案審理の問題 違憲判決の効力の問題 5−4 人権の享有主体      11条 国民は、全ての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできな      い永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。 1.国民   10条 日本国民たる要件は、法律(国籍法)でこれを定める   国籍法第2条 子は次の場合には、日本国民とする。  一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。  二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であったとき。  三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は、国籍を有しないとき。    →血統主義(原則)+出生地主義 2.天皇・皇族  *天皇・皇族に人権享有主体性が認められるか。   →肯定説(通説):天皇・皇族を人権の主体たる国民の中に入れ、人権は保障される、とする。    但し、皇位の世襲と職務の特殊性から必要最小限度の特例が認められる。    否定説(佐藤幸):天皇・皇族を人権の主体たる国民の外に置く r.皇位世襲など、現行法上天皇や皇族に与えられている特権及び制約から考えると、憲法14          条の門地により差別されないとする国民ではありえない。従って憲法11条の国民にはあた   らず、よって人権共有主体性もない。   ・選挙権・被選挙権・公務就任権、国籍離脱の自由・移住の自由、職業選択の自由等は制限される。 3.法人の人権  *法人に人権享有主体性が認められるか。   →通判)性質上可能な限り認められる。   r.法人の活動は自然人を通じて行なわれ、その効果は究極的に自然人に帰属する。 法人は現代社会において1個の社会的実体として重要な活動を行なっている。  *法人にも、自然人と同程度の人権保障が及ぶか。 政治献金   →通説)自然人よりも広範な積極的規制を加えることが許される。   r.法人は強大な社会的権力になっている場合があり、人権の実質的公平の観点からいうとある程度の制約は      やむを得ない。 4.未成年者の人権  →保障は未成年者の未熟性ゆえ成年者よりも制約を受ける。 選挙権、婚姻、職業選択の自由など 5.外国人の人権  (1)人権享有主体性   *外国人に人権の保障が及ぶか。憲法第3章の表題が「国民の」となっていることから問題となる。A    →肯定説(通判):外国人にも人権の保障が及ぶ。 r.日本国憲法は前国家的な人間の権利を保障するという思想ないし自然権思想に基づいて人権        の規定を設けている。憲法の国際協調主義の精神に合致する。   *外国人が人権の享有主体であるとして、人権規定の全てが適用されるのか。人権保障の及ぶ範囲。A    →性質説(通判):外国人にも権利の性質が日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き適用される。     文言説:「何人も」と規定されている場合は外国人も含まれる。    c.22条2項(国籍離脱の自由)は「何人も」と規定しているが、この規定は国民のみを対象としている。  (2)認められる人権の範囲    1)選挙権・被選挙権・公務就任権     *外国人にも国政選挙の選挙権・被選挙権が保障されるか。A   →否定説(通判):外国人には参政権は保障されていない。  r.国民主権原理から見て、国民が国政に対して直接ないし間接に参加する権利である参政権        を日本国民に限ることは、権利の性質上認められる合理的な制約である。    肯定説(浦部):生活の実体という点で日本国民一般と変わらないような外国人に対しては参政権も保障されて        しかるべきである。  r.国民主権とは民主主義と密接に関連し民主主義は治者と被治者の同一性を要求する。人権     の問題を考える際に重要なのは、その人の国籍ではなく、生活の実態である。     *外国人に地方選挙の選挙権・被選挙権が保障されるか。A   →禁止説(宮沢):外国人に地方参政権を付与することは憲法上禁止されている。r.国民主権    肯定説(浦部):生活の実態という点で日本国民一般と変わらないような外国人に対しては参政権を保障すべき。    許容説(通判):外国人に地方選挙の選挙権・被選挙権を与えることを憲法は許容しており、法律で定めた場合        には合憲となる(立法政策の問題である)。    r.93条2項の住民は日本国民のことをさすが、地方自治は地方の住民の自治の意思に基づいて       おり、その区域の地方公共団体が事務を処理することが憲法上保障されている。外国人も密接  に地域に関係している場合にはその地域の政治に関与する権利を立法政策上認めてもよい。     *外国人に公務就任権が認められるか。  公務就任権は22条(職業選択の自由)13条(幸福追求権)15条(選挙権・被選挙権)から認められる。   →通説)国政、特に権力的な作用に影響を与えるということになると国民主権の観点から問題がある。しかし、非    権力的な作用については公務就任権が認められる。    2)政治活動の自由     *政治活動の自由は、外国人にも日本国民と同程度に保障されるか。   →限定保障説(通判):外国人の参政権は認められない(通判)ので、その趣旨と矛盾すると考えられる程度に参      政権的機能を果たすような政治活動の自由は、外国人には保障されない。    無制限保障説(浦部):外国人の政治活動は、日本国民と同様に保障される。 r.狭義の参政権とは異なり、国民の主権的意思決定に影響を与えるにすぎない。   外国人による多様な見解の提起は、国民の主権的意思決定を豊富にする効果がある。    3)社会権     *外国人に社会権が保障されるか。   →通説)社会権は、後国家的権利であり専ら各人の所属する国家によって保障されるべき権利であるから、外国人       に及ばないと一応言える。但し、社会権を法律によって具体的に保障することが原理上排除されるわけで     はない。特に生存権は個人の尊厳を実質的に確保する権利であり積極的に法律で保障していくべきである。    4)出入国関連     *外国人に入国の自由は憲法上保障されているか。   →否定説(通判):憲法は外国人の入国の自由を保障していない。    但し、国際協調主義から、手続は恣意的であってはならない。  r.国家が自己の安全と福祉を図るためそれに危害を及ぼす恐れのある外国人の入国を拒否す     ることは国家の主権に属し、国際慣習法上入国の許否は各国の自由裁量に委ねられている。     *外国人に在留権は憲法上保障されているか。   →否定説(通判)r.入国の自由がない以上、在留の権利も外国人に保障されているとは言いがたい。     *外国人に出国の自由は憲法上保障されているか。   →肯定説(通説):22条の「外国に移住」する自由ないし「居住移転の自由」によって保障される。  r.22条の性質上外国人に限って保障しないという理由はない。     *滞在資格を有する外国人に再入国の自由は憲法上保障されているか。   →肯定説:在留資格を有する外国人がその在留期間満了の日以前に再び入国する意図を以て出国しようとする場合        である再入国については、外国人にもその保障が及ぶ。但し、著しくかつ直接に日本国の安全と独立及     び国民の福祉を害する恐れがある場合には再入国を許可しないことができる。    否定説:入国の自由と同様に保障されないが、再入国の場合には法務大臣の裁量権は制限を受ける。    5)経済的自由権   職業選択の自由→一部の職業については認められない。 裁判官・検事・鉱業権者etc.   財産権→一部制限される。